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ぬのかわ通信

ぬのかわ通信vol.8 犬のリンパ腫

こんにちは獣医師の布川智範です。
今回のぬのかわ通信では犬のリンパ腫についてQ&A方式で紹介していきたいと思います。

Q. リンパ腫ってどういう腫瘍ですか?

リンパ腫とは血液由来のリンパ球が腫瘍化したものです。
体の中にある免疫を司るリンパ節から発生したり、リンパ節とは関係のない臓器から発生することもあります。また、血液をつくる骨髄から発生した場合は白血病と呼ばれ、同じリンパ系の腫瘍ですがリンパ腫とは異なります。一般的な腫瘍のようにしこりを作ることもありますが、しこりを作らず進行することもあります。

Q. リンパ腫は悪性腫瘍ですか?

以前は悪性リンパ腫とも呼ばれており、基本的には無治療でいると様々な臓器に浸潤していくため悪性の挙動を示します。しかし、リンパ腫には様々な分類が存在し、悪性度が低いものから高いものまであり、治療も異なります。

Q. どんな種類のリンパ腫がありますか?また、どんな症状がありますか?
発生部位による分類表
多中心型リンパ腫
体の表面にあるリンパ節が腫れるものです。下顎や首の周り、膝の近くのリンパ節などが大きく腫れます。症状は元気がなかったり、熱が出たりすることから、首の近くのリンパ節が大きくなり気道を圧迫すると呼吸が苦しくなったりします。
消化管型リンパ腫

消化器型リンパ腫の超音波像 胃腸の構造が不整になっています。

腸やその近くのリンパ節などが腫れるものです。腸全体でリンパ腫の細胞が増殖する場合や一部で増殖し、腸閉塞を起こすこともあります。症状は食欲がなくなり、体重が減少します。消化や吸収が悪くなり、嘔吐や下痢が続くこともあります。
皮膚型リンパ腫

皮膚型リンパ腫(お腹) 皮膚の広い範囲に皮膚炎が認められます。

皮膚にリンパ腫の細胞が入り込み、皮膚炎を引き起こします。皮膚の感染症を伴い発熱が認められたり、強い痒みを伴うことがあります。
縦隔型リンパ腫
胸の中のリンパ節が腫れます。炎症やリンパ流の流れが悪くなり胸の中に水が貯まると、呼吸が苦しくなったり、咳がでるようになります。

これ以外の部位でもリンパ腫は発生することはあり、症状はその部位により様々です。

Q. どのように診断するのですか?

細胞の検査で診断した高悪性度のリンパ腫

リンパ腫の診断は腫れているリンパ節に細い針を刺して、細胞を顕微鏡で確認して診断します。 一般的に悪性度が高いタイプのリンパ腫は診断することができますが、悪性度が低いタイプのものでは細胞の検査だけでは診断が不十分です。 その場合には、組織の検査が必要になり、病変部の一部を塊で採取する必要があります。

また、リンパ球は多彩な種類がありますが、リンパ腫に侵された部位では単一のリンパ球の集団(クローン)となり、遺伝子の検査が補助的な診断で役に立つこともあります。

Q. どのような治療を行いますか?

リンパ腫という腫瘍は抗がん剤が有効で、特殊な場合を除いては手術や放射線より抗がん剤の治療が選択されます。 悪性度の高いリンパ腫では、無治療の場合にはその生存期間はおよそ1ヶ月といわれ、積極的な治療が必要になります。 腫瘍細胞が抗がん剤に耐性を身につけることがあり、それを防ぐために何種類かの抗がん剤を組み合わせて使用し治療にあたります。

リンパ腫の治療に使用される抗がん剤

悪性度が低いリンパ腫には副作用が少ない抗がん剤や腫瘍に対して効果のあるホルモン剤を使用します。症状がない場合には抗がん剤を使用せず、経過を観察する場合もあります。

Q. 抗がん剤治療は安全ですか?

リンパ腫の治療の目標は、身体の中の腫瘍細胞の数を減らして、元気でいられる時間を長く作り出すことです。これを寛解といいます。 治療の目標は抗がん剤をうまく利用して長期的な寛解を目指します。抗がん剤というと少し恐いイメージを持たれるかもしれません。 しかし、それぞれの抗がん剤の特徴を理解して正しく使用することで、副作用が出たとしても適切に対応すれば、リンパ腫の苦しみから解放できる時間を作り出せることが可能です。腫瘍の進行により体力が低下していて、抗がん剤によって生活の質(QOL)が著しく低下することが予測される場合や、抗がん剤の副作用が強くでてしまっている場合には、強い抗がん剤の使用を避けたり、投与を延期したりすることもあります。状態に合わせた治療が大切になります。

最後に

リンパ腫は悪性の経過を取ることが多く、治療の見込みが厳しいものですが、適切に治療を行うと完治する可能性があるものです。(犬の多中心型リンパ腫の2年生存率20~25%) また、残念ながら完治することができずリンパ腫によって寿命が決まってしまう場合でも、緩和的治療や補助療法により負担を軽減することで生活の質を改善することができます。

現在、人の化学療法分野では従来の殺細胞性剤から発展して、腫瘍化したリンパ球をターゲットに効果をもつ分子標的治療薬やガンに対してのワクチン(ガンワクチン)の使用が試みられています。 現在の研究の段階ではありますが、将来ワンちゃん猫ちゃんのリンパ腫の治療でも使用され、治療成績が向上することを期待しています。

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