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ぬのかわ通信

ぬのかわ通信vol.14 心臓病~先天性心疾患・心室中隔欠損症(VSD)~

こんにちは、獣医師の久津間です。今回は心臓病についてです。
「心臓病」と聞くと怖いイメージも多いですが、病気ごとに注意する点や進行度が異なるため、ぬのかわ通信で犬猫に起こる各種心臓病を紹介していこうと思います。

今回は先天性の心臓病である「心室中隔欠損症」についてご紹介したいと思います。

はじめに先天性の心臓病(心疾患)とは、生まれつき心臓やその周囲の血管に構造的な異常があり、血液の流れに悪影響を及ぼす病気です。その血流の変化により、全く症状を示さない子もいれば生後間もなく重篤な症状を示す子もいます。先天性の心臓病には多くの種類があり、その病気や程度の差によって症状が異なってきます。

心室中隔欠損症とは

犬猫の心臓は、左心房、左心室、右心房、右心室、と4つの部屋があり、各心房と心室とを隔てる壁を中隔といいます。全身をめぐってきた静脈血は右心房から右心室に入り、肺へと運ばれ、酸素化された動脈血となります。それらは左心房から左心室に入り、全身循環に入ります。

心室中隔欠損症について

心室中隔欠損症とは、生まれつき左心室と右心室とを分けている中隔(心室中隔)に穴(欠損孔)が空いている病気です。その欠損孔を血液が左心室から右心室、または右心室から左心室へ流れることで全身の血行動態に変化を与えます。欠損孔の大きさ(短絡率)により病態が異なったり、他の先天性の心臓病を併発したりする場合もあります。稀に自然閉鎖することもありますが、右室側に持続的に負荷がかかると右心室から左心室に血液が流れるようになります(アイゼンメンジャー症候群)。その場合、手術ができなくなり、お薬で管理していくことになります。欠損孔が小さいなど、手術をしなくてもいい場合もありますが、病気の程度によっては手術が必要になってくることもあります。
また欠損孔の位置により、4つのタイプに分類されます(Kirklin分類)

Kirklin分類
Ⅰ型 漏斗部中隔欠損型
欠損孔は肺動脈弁直下の右室流出路に位置
Ⅱ型 膜様部中隔欠損
大動脈弁近位の左室流出路に位置し最も発生率が高い
Ⅲ型 心内膜床欠損型
僧房弁尖または三尖弁尖下に位置
Ⅳ型 筋性部中隔欠損
心尖部に欠損孔が位置

診断方法

一般的に、心室中隔欠損症の子では聴診にて雑音が聴取されます。そこから心電図検査やレントゲン検査、超音波検査などを行って診断していきます。中には全身麻酔になってしまいますが、X線透視装置を用いての心臓カテーテル検査や心臓のCT検査を行うこともあります。

心臓超音波所見

心臓超音波所見注釈

画像は心室中隔欠損症(KirklinⅡ型)の心臓超音波所見です。
左心室と右心室を隔てる心室中隔に4mm~5mm程度の欠損孔が確認できます。

心臓超音波所見

画像は欠損孔を流れる血流の速度と方向を測定しています。
速度は2.4m/sで血流の方向は右心室から左心室(右左短絡)へと流れています。

動画は欠損孔を流れる血流の様子です。超音波では短絡している乱流はモザイクのように見えるので、そこに欠損孔があることがわかります。

治療方法

小さな欠損孔であれば、まれではありますが自然と閉鎖する場合もあります。治療が必要かどうかは短絡血流量や臨床症状の有無、および心不全の程度によって判断されます。
治療方法は大きく分けて内科治療と外科治療があります。

内科治療

心臓の負荷を軽減することが主体であり、生活の質(QOL)の改善が目的です。一般的には血管拡張薬や強心薬、利尿剤などが使用されます。血管を拡張することで心臓にかかる負担を軽減したり心臓の保護をしたりします。また、心臓の収縮を補助することで全身のむくみを改善するなどの心不全の症状を軽減します。

血管拡張薬、強心薬、利尿剤など

外科治療

大きな欠損孔がある場合などに適応され、根治治療が望まれます。
方法は大きく分けて3種類あります。

1. 開心下欠損孔閉鎖術

人工心肺装置を使用して欠損孔の直接閉鎖を行ったり人工パッチグラフトを用いたりなど様々な方法があります。しかし、心臓を開いたり停止させたりの手術(開心術)となるので高いリスクと合併症などが課題となっています。

2. 経皮的血管内治療法

頸部の血管などを介して心臓にカテーテルを通し、欠損孔へとアプローチすることで孔を塞ぐカテーテル治療(インターベンション)です。胸を開けることはないのでより低侵襲で行うことができます。
「コイル塞栓術」や「Amplatzer閉塞栓による塞栓術」の2種類があり、欠損孔の大きさや形状などによって最適なものを選択します。

3. 開胸下血管内治療法

胸を開けての手術(開胸術)とカテーテル治療を組み合わせたものとなります。心臓を開くことはないので開心術と比較して侵襲は低くなります。開胸術により大型デバイスの使用が可能となり小型犬や猫にとって治療の選択肢を広げることができます。

外科治療が必要な子には専門の施設をご紹介いたします。病気の重症度や進行度、また飼い主様の希望に合わせた治療をご相談させていただきます。

まとめ

心室中隔欠損症は先天性の心臓病のうち、比較的発生率の高い病気です。若齢の時期から活動性に乏しかったり、遊んでいてもすぐに疲れて苦しくなってしまったりなどの症状がある子は心臓の検診を受けることをお勧めします。
心室中隔欠損症はその子によって重症度が異なっており、治療が必要ない子から積極的な治療が必要な子までいます。治療が必要かどうかの判断や現在行っている治療の相談、手術希望の方は是非当院循環器科にご相談下さい。

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