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症例紹介

産科

出産・難産・帝王切開

こんにちは。 副院長の池田です。

前回にひき続いて犬の産科をテーマにまとめます。今回は犬の出産についてのお話しです。

古来より、日本では犬はたくさん子供を産む上にお産が軽い動物として、安産の守り神として祀られてきました。ご出産を経験された方の中には、戌の日の祝いとして腹帯を巻かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。日本人にとって犬はもともと安産な動物という印象があるようです。

しかし、日本に従来いた犬種は比較的体が大きく(小型とされる柴犬でも5kg以下になることはありません)、体型もお産に適した体型でした。同じ犬でもパグやブルドッグに代表される短頭種、チワワやポメラニアンなどの超小型犬種については母犬の産道に比べて赤ちゃんの頭が大きく、難産になることがしばしばです。また、同腹の子が病気だったり、お母さんが体調を崩していても難産になることが、あります。犬のお産を行う場合は、安産だからと安易に行うのではなく、いざという時に備えて難産に対する知識をつけておく必要があります。

犬の妊娠期間は、前回の投稿でも触れましたが、およそ2ヶ月です。妊娠しているかどうかはっきりわかるのは交配日からおよそ1ヶ月後になります(早ければ3週間程度でもわかりますが、はっきり診断するにはこの位の時期がお勧めです)。超音波検査を行うと赤ちゃんの心臓の動きが確認できてとても感動的です。妊娠初期の1ヶ月はまだ母犬のお腹も大きくなっておらず、日常生活ではあまり変化を感じ無いと思います(時折食欲不振などのつわりに似た症状が出ることもあります)。しかし、ここからさらに1ヶ月の間に母体は出産に向けて急速に適応し始めます。
乳腺が張り、お腹も膨らんできて、食欲も増えます(小型犬の場合、後期に入ると膨らんだ子宮により胃が押され、一度にはたくさん食べられなくなることがあります)。
妊娠がわかってからは毎日朝・昼・晩と1日3回基礎体温を調べる習慣をつけておくと良いでしょう。これは、母犬の健康をチェックすると同時に出産の時期を見極めるためにもとても有効です。体温を測る際は必ず直腸の温度を測るようにしてください。人は脇の下や舌の下で体温を測ることができますが、犬の場合は安定した数値になりません。
交配日から50日を過ぎると骨格もしっかりしてくるため、胎児がX線に写るようになります。胎児の数を調べたり、母犬の骨盤と胎児の大きさを比較したりすることが出来るため、交配日から55日以降に一度はX線を撮影されることをお勧めします(当院ではX線撮影による被爆量が十分に少なくなるように実施しておりますので安心してお任せください)。

出産予定日が近づいてきたら、母犬が安心してお産に集中できる環境を用意してあげましょう。なるべく目が届く範囲で、かつ外部からの刺激が少ない場所に寝床を用意してあげてください。体温調整が行い易いように毛布やタオルを用意してあげると良いでしょう。通常、陣痛が始まる前に母犬の体温が低下します。一般的には37度以下になりますが、個体差があります。基礎体温を測定されている場合はより正確に判断でき、通常1度以上の体温低下が認められます。体温の低下が確認できたらほとんどのケースで24時間以内に陣痛が始まります。もし丸1日経っても陣痛が起こらない場合は微弱陣痛の可能性があるため、かかりつけの病院にご相談ください。

出産を予定している子が短頭種であったり5kg以下の(超)小型犬腫である場合は、順調に進んだとしても難産になるかもしれないと心構えをしておくと良いでしょう。必ず出産前に、難産になったとしても対応できる病院を見つけて事前に相談しておくと安心です。できれば帝王切開が可能な施設があるとより良いでしょう。難産がわかってから病院を探そうとしてもすぐには見つからなかったり、時間帯によっては手術が不可能なケースもあります。この辺りの事情は人の出産と同様ですので、出産がわかった時点で相談できる先生をしっかりみつけておくことが大切です。もし難産がほぼ確実なケースであれば、帝王切開を事前に予定して手術を行った方が緊急手術に比べてより安全に実施することができます。

帝王切開が必要になった場合は、可能な限り速やかに手術を実施し、母体と胎児への影響が極力少なくなるようにします。当院では、母犬が出産後に子育てを行うことを想定し、出来る限り母体の傷が小さくて済むようにしています(小切開法)。この手術方法は、子宮を体外に出さずに手術を進めるため母体にも胎児にも優しい方法です。ただ、技術的に少々難しい点があるため、ご希望の場合は事前に必ずご相談ください。

赤ちゃんを取り出すところ

帝王切開後のお母さんのお腹の傷(小切開法)

無事生まれてきた赤ちゃんと大役を終えた後のお母さん