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症例紹介

循環器科

心臓外科について

これまでは心臓病の手術、特に心臓を開く開心術は専門の施設へと紹介しておりましたが、当院でも手術が必要なワンちゃんネコちゃんの治療にも対応できるようになりました。
心臓病は進行していく病気です。人では人工心肺を用いた手術が一般的に行われていますが、動物はお薬を飲む内科治療を行うことが一般的です。しかし、内科治療では心臓病自体を治すことはできません。
一方、手術による外科治療では心臓病を根治に近い状態まで治すことができます。

ペットの高齢化に伴い、心臓病を患う動物は増加傾向にあります。しかし、日本では手術を行える施設が限られているため手術が必要な状態でもすぐに対応していただけないこともあります。
そのような中で、心臓病で苦しむ子たちを少しでも減らせるようにと思い、当院でも心臓病の手術を行えるような施設へと展開してまいりました。

今回は、当院で主に行っているワンちゃんの僧帽弁閉鎖不全症の外科治療について記載させていただきます。
僧帽弁閉鎖不全症の病気の詳細については症例 vol.17 犬の僧帽弁閉鎖不全症をご確認ください。

僧帽弁閉鎖不全症はアメリカ獣医内科学会(ACVIM)が定めたガイドラインによって治療の適応基準や各症例のステージ分類が行われています。

ACVIMが定めたガイドライン]

StageA ・質的異常無し(心雑音無し)
・今後心疾患となる可能性有り(キャバリアなど)
StageB1 ・僧帽弁逆流を呈するが無徴候
治療が必要 StageB2 ・重度な僧帽弁逆流で左心房および左室の拡大を生じている無徴候の状態
StageC ・心不全兆候の既往有り≒肺水腫による呼吸困難など
・現在、心不全(うっ血性心不全≒肺水腫)の治療中
StageD ・標準的な治療に反応しない末期の心不全
・繰り返す肺水腫(コントロール困難)

これまでStageB2以上の症例に対して内服薬(強心剤であるピモベンダン)の必要性が、StageC以上の症例で手術の検討がなされてきました。
しかし、StageB2の症例の中にも僧帽弁の変性が重度であり、進行の早い症例もいるため、外科治療が新しく適応基準として加わりました。

また、内科治療の報告として

StageB2 ピモベンダン投与群の中央生存期間:約3年
(A.Boswood et al. J Vet Intern Med 2016:The EPIC study)
StageC ピモベンダン投与にて中央生存期間:279日および1年生存率:約40%
(J.Haggstrom et al. J Vet Intern Med 2008:The QUEST study)
StageD 内科治療では治療困難なことが多い

このような報告やガイドラインに則って、当院では手術を視野にいれて治療プランを提案させていただいています。

手術の適応基準

年齢:基本的には制限はありません。元気で他の病気が無ければ15歳くらいの高齢の子で行うこともあります。9歳~13歳で実施することが多いです。

体重:2kg以上あるのが理想です。低体重の子では循環血液量が少なく低血圧となり、体外循環を行うことが難しくなりますが1.8kgの子で実施したこともあります。

Stage:B2以上です。心拡大が重度で逆流の量も多く、肺水腫に移行してしまいそうな子は特に適応となります。ご希望によってはB1で行うこともあります

また、左心房の破裂を起こした子も内科治療の成績は非常に悪いので早期に手術に取り組むことが理想です。

手術について

人医療と同じように人工心肺を用いた手術を行います。
手術の流れとして

人工心肺図

  1. 全身吸入麻酔下で手術を開始
  2. 体外循環開始
  3. 開心手術
  4. 体外循環離脱
  5. 創部を縫合
  6. 人工呼吸器からの離脱
  7. ICU管理
 

となります。
心臓の動きを止めて手術するため通常の手術よりも時間が必要となりますが (6~7時間程度)、実際に心臓が止まっている時間は約1時間程度です。
手術は術者、助手、器具出し、麻酔医、人工心肺を操作する技師、外回りのなど心臓外科チームで行います。
治療成績はその子の心臓の状態によって左右されますが、9割以上の患者様が退院します。

手術内容

僧帽弁閉鎖不全症の手術は、腱索再建術と弁輪縫縮術を組み合わせた僧帽弁形成術 (MVP:Mitral Valve Plasty)を行います。

腱索再建術

腱索は乳頭筋を土台として発生しており、僧帽弁を支えています。
腱索が断裂したり緩んだりすると僧帽弁の構造が脆弱になり、血液の逆流が生じます。
そこで、ePTFE糸という生体適合性に優れた特殊な糸を用いて、腱索を新しく再建します。乳頭筋から僧帽弁へと糸をかけ、人口腱索を再建します。腱索の長さを整えて前尖と後尖の高さを合わせることで僧帽弁の構造が保たれ、血液の逆流量を軽減することができます。

腱索再建術図

赤線:断裂した腱索や緩んだ腱索
青線:糸で腱索を再建したもの

Sample Content

弁輪縫縮術

心拡大によって拡張した弁輪を正常な弁輪径にまで縫い縮めて、僧帽弁の前尖と後尖の接合面積を増加させます。
前交連部から後交連部まで後尖側の弁輪を半周にかけて交代縫合をおこない、拡張した弁輪を縫い縮めることで僧帽弁逆流を制御する方法です。(De Vega変法)

入院と術後管理

手術の前日に入院となります。手術当日は24時間管理を行います。次の日から、状態に合わせて入院管理を実施します。
手術後の退院の目安は7~14日となっています。入院および退院日はその患者さんの状態によって変更することがあります。抜糸は術後約10~14日に行います。

手術の費用について

手術費用の総額 160万前後(税別)(入院から退院までの総額)
※心臓外科手術は人工心肺など医療材料が非常に高額であり、多くの人員を要して手術をするため、手術準備金をいただいております。
※緊急手術の場合や、不測の合併症、他臓器の疾患の治療などで費用が高くなる場合があります。

手術後の検診

術後も心臓の状態を定期的に確認する必要があります。
術後2週間で抜糸を行います。その後は術後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年と検診が必要になります。検診の費用もその子の状態によって変わってきますが、3万~5万円程度必要となります。

手術後の検診スケジュール
手術 2週間 1ヶ月 2ヶ月 3ヶ月 6ヶ月 1年
  抜糸 検診 検診 検診 検診 検診

心臓病の治療では病気の種類や重症度を正確に診断する必要があります。
治療が必要かどうかの判断や現在行っている治療の相談、手術希望の方は当院循環器科にご相談下さい。
また、以下に当院の心臓手術チーム(犬と猫の心臓外科)についてご紹介させていただきます。

手術室