角膜潰瘍
角膜潰瘍とは?
角膜とは、眼の表面に位置する透明な膜で、一般的には黒目と呼ばれている部分です。
角膜は5層構造になっており、外層から角膜上皮、角膜基底膜、実質、デスメ膜、角膜内皮で構成されています。
正面(水色で示す範囲) | 断面(水色で示す範囲) |
角膜潰瘍とは、角膜になんらかの要因で傷が出来てしまった状態です。
傷の深さによって分類(※)され、最終的には角膜に穴が空いてしまう「角膜穿孔」に至ります。
※傷の深さによる分類
正常な角膜の断面 | 角膜びらん |
表層性角膜潰瘍 | 深層性(実質性) 角膜潰瘍 |
デスメ膜瘤 | 角膜穿孔 |
原因
角膜に傷を作る要因として多いものは下記の様な原因があげられます。
・外傷や異物による刺激、まつ毛や眼瞼の異常など機械的な原因
・シャンプー剤や薬剤による化学的な原因
・細菌やウイルス、真菌などの感染
・ドライアイや涙の異常、角膜の異常などの内因的な原因
・免疫の異常に伴う角膜のトラブル
症状
角膜に傷が出来ると強い痛みを生じる事が多く、眼瞼(まぶた)の痙攣や流涙、眼脂(めやに)などが認められます。
経過が長くなると、角膜に混濁や血管の新生を生じます。
悪化し角膜穿孔に至ると、出血を起こす場合もあります。
検査
角膜の傷を染めるフルオルセイン染色試験にて、傷の有無を検出します。
また、検眼鏡による傷の深さや状態の確認、涙液量測定(シルマーティアテスト)による涙の量の測定などを用いて、原因についても調べる必要があります。
治療
原因がある場合には、原因に対する治療が必要となります。
原因がない場合、あるいは原因を取り除いた上で角膜の治癒を促進するために、ヒアルロン酸などの点眼治療を行います。
傷が深い場合や、炎症、感染などがあり進行が予想される場合には、悪化を防止する為の抗コラゲナーゼ薬の点眼を用います。
また、角膜保護を目的としたコンタクトレンズを挿入する事もあります。
傷が重度の場合や、進行が止まらない場合には、手術による外科的な介入が必要となる事もあります。
症例紹介
検査
犬種:シーズー
年齢:9歳8ヶ月
主訴
急に左眼をしょぼしょぼし始め、涙も多くなり、手持ちのヒアルロン酸を点眼していた。
点眼を続けて1週間経ったが症状の改善がないとの事で当院を受診。
所見
外貌検査では角膜に混濁、血管の新生が認められました。
フルオルセイン染色試験は陽性、角膜中央部に傷が認められました。
シルマーティアテストにて、涙の量に問題はみられませんでした。
検眼鏡による検査にて、眼瞼縁(まぶたのふち)に睫毛重生(逆さ睫毛)を認めました。
外貌 | フルオルセイン染色試験 |
治療
今回の傷が治らない原因として、睫毛重生による角膜への刺激を疑い、睫毛の抜去を行いました。
角膜保護のために、コンタクトレンズを挿入しました。
点眼薬はヒアルロン酸を継続し、角膜への感染予防に抗生剤を追加で処方しました。
1週間後の様子
週間後の再診時には症状はおさまっており、眼もしっかりと開けられるようになっていました。
角膜の混濁は残っていましたが、フルオルセイン染色試験は陰性、傷は無くなっていました。
コンタクトレンズは抜去し、ヒアルロン酸の点眼のみをもう1週間継続し、治療を終了としました。
1週間後の外貌 |