電話
アクセス
ドクター
予定表
WEB予約
Page Top

症例紹介

腫瘍科

肛門嚢アポクリン腺癌

こんにちは獣医師の布川智範です。
今回は肛門の下にあるにおい袋「肛門嚢」に発生する腫瘍、肛門嚢アポクリン腺癌の症例を紹介いたします。

 

症例

・ミニチュアダックスフンド
・10歳
・主訴:排尿に異常

検査・診断

腹部エコー検査で偶発的に腹部の腫瘤と下腹部のリンパ節の腫れが認められました。
泌尿器には問題はなく、腫瘤の摘出を視野に入れCT検査を実施しました。
CT検査では腰下リンパ節群が複数箇所腫れており(写真矢印)、腫瘍の転移が疑われました。

 

治療・経過

細胞の検査も行いましたが、腹部腫瘤のリンパ転移なのか判断がつかないため、手術で腹部腫瘤とリンパ節の摘出を行いました。
結果として腹部の腫瘤は腫瘍性の病変ではなく、腰下リンパ節は肛門嚢アポクリン腺癌の転移病変という病理検査結果が出ました。


↑摘出したリンパ節

肛門嚢アポクリン腺癌では原発である肛門嚢が大きくならず、転移先のリンパ節が大きくなってみつかることがあります。
しかし、この腫瘍はリンパ節に転移していても転移病変の積極的な治療を行うと治療成績が向上することが報告されております。

今回の症例も原発の肛門嚢は全く大きくならずにリンパ節転移が起こっていたため、分子標的薬であるトセラニブ(製品名:パラディア)による化学療法を開始しました。

トセラニブ(パラディア)を開始して2年4ヶ月後に原発である肛門嚢が徐々に大きくなり、排便に影響する可能性が懸念されたため手術によって腫瘍化した肛門嚢の摘出を行いました。

  

現在は初期の肺転移が認められるようになり、進行を慎重に経過観察しております。
治療開始してから3年が経過しようとしてますが、腫瘍による症状も無く、元気に過ごしております。

 

 

肛門嚢アポクリン腺癌は診断時に転移が成立してしまっていることも多い腫瘍ですが、局所治療と全身治療を適切に行った場合には長期的なコントロールが望める場合があります。